十字架の街 5

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   十字架の街 5



 (返信)
 離れているけれど一番の我が友人よ。ちょっとばかり時間が経過してしまったけれど、君の興味深い手紙を読んだよ。
 私も旅の地で、つるぎの街に関する噂を聞いたよ。どんな噂だか聞きたいかい?
 ・・・太古の決闘が終了してから何百年の後、ルガル・ディー家の子孫の一人が、街に再びやってきて、街中の屋根と塔の上に突き刺さっているつるぎを、決闘の勝利によってすぺて取りかえたと言う伝説さ。
 魅力的だろう? ずいぶん君の報告とは違ってしまっているみたいだが。
 なぜ、真実がこんな噂となったのか。ちょっと気になって、近くまで行く機会があった時に、私もつるぎの街に立ち寄ってみたよ。
 すると街のようすは、どんなだったと思うかい?
 街の屋根では連日、あちこちで決闘が行われ続けられていたよ。その活気たるや、決闘の全盛期がよみがえったかのような熱気だった。もちろん私も、その熱気に満ちた雰囲気は、たっぷりと堪能したよ。
 君の報告通り、すばらしかったよ。その雰囲気はとても楽しめるものだった。まるで古代の遺跡が、ある日、突然あざやかによみがえった景色をながめることができたら、君だって驚くだろ? そのおどろきはとても感動的なものなんだよ。
 ルガル・ディー家の子孫、つまり「ドク」だね・・・が決闘を放棄して去ってしまったから、街の人は屋根に刺さったままのつるぎを取りかえるために、自分たち自身で決闘を行うことになったらしいよ。
 ところが決闘を実際に、ひんぱんに行ってみたら、おもしろくて街中の人間が屋根の上の決闘にはまってしまったのさ。昔の記憶がよみがえったのかもしれないな。そうなると、この状況のきっかけを作ったルガル・ディー家の子孫に感謝しだした。そんな人々の気持ちが言い伝えの意味合いを、どんどんと変えていったんだろうな。こうして伝説は、作られるのだとわかってきたよ。
 それで街は、この盛況さ。君も一度、訪ねてみるといい。あいかわらず街中の屋根や塔に、十字架のようにつるぎが刺さっているぜ。まるで十字架の街のように見えるな。
 じゃあ友よ、またいつか会おう。

           おわり