銀色ルーペ 06

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銀 色 ル ー ペ 6


 息を切らして図書館の裏の待ち合わせ場所に駆けつけると、すでに砂流は待っていた。何やら背中にリュックを背負っている。
 「夏伽にでも見つかったのかい?」
 息を切らしている文都のようすを見て、砂流はおかしそうに笑って言った。
 「・・・なんでわかるのさ?」
 「だって見つかったのが詩都にだけなら、何とか黙っているように頼み込めるだろ? それが逃げるように走って来たってことは、話し合いが通じない相手に見つかったってことじゃないのか?」
 「両親ってこともあり得るだろ?」
 「両親に見つかったなら、家から出してもらえないさ」
 砂流に見透かされて、息が切れて疲れたのも手伝って、文都は黙り込んだ。
 「まあ、いいさ。両親に見つかったのでなければ、今日の探検は十分に行えるってことだからな。さあ行こう」
 そう言って歩き出した砂流の後を文都は、少し緊張しながらついて行った。夜と言うのもあるけれど、しのびこむの先が人けのない地下展示室だと言うことに少し怖さを感じる。いくら砂流の家の一部だからと言っても。
 「もう明かりは消えてるね」
 文都は黒い影の塊と化している巨大な図書館の建物を見上げて言った。なんだか心細くなってくる。いくら砂流が一緒だと言っても。
 「十時までだからな」
 そう答えて砂流は、もくもくと歩き続ける。置いていかれないように文都は、砂流の上着の端をそっと砂流に知られないようにつかんだ。砂流は少しも怖がってはいないように見え、そんな態度がうらやましく思えている。
 「昼間のうちに鍵を開けておいたんだ」
 そう言って砂流は小さな空気入換え用の書庫の窓を開けた。子供がやっと通れるくらいの大きさだ。これでは警備員も気を抜いてしまうだろう。順番にしのびこんだ。
 「明かりがないと、真っ暗だよ。懐中電灯はまだ使わないの?」
 館内は、窓から差し込む月光を反射して、ぼんやりと大理石の床が光る以外には何も明かりがない。昼間とはまるで違う。
 「まだ駄目だ。窓から明かりがもれる」
 砂流は文都の手を取って、ひっぱってくれている。暗闇では友人の姿を見失ってしまうからだ。だが文都にとっては、ありがたかった。砂流は暗闇でも図書館の構造を知りつくしているのか、ためらいなく進んでゆく。
 地下に続く階段を見下ろすと、階段が途中から闇に溶け込んでしまっていた。
 「ここ・・・下りて行くの?」
 文都は少しためらった。
 「当然だろ? それともやめるかい?」
 からかうような砂流の口ぶりに、文都は思わず「行く」と答えてしまった。
 「じゃあ、転ばないように気をつけろよ」
 そう言って砂流は階段を下りはじめた。あいかわらず文都の手を握っているので、文都もつられるように階段を下りてゆく。何も考えないでいようと文都は決めた。



連載第7回へと続く