銀色ルーペ 10

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銀 色 ル ー ペ 10


 夜。自分の部屋にこもり、地図をルーペで調べる。文都は昼間、砂流に言われた宝の地図かも知れないと言う言葉に、がぜんやる気が出てきていた。
 宝って、何だろう? どんなものだろう。そう考えずにはいられない。夕食の時に両親にさりげなく聞いてみたところ、ひいおじいさんは若い時に東欧に留学していたことがあると言う。まだ東欧の王朝が滅びる前で、毎夜、オペラやダンスパーティーが開かれていて、ひいおじいさんも招かれてたらしい。七色の硝子が街中に散りばめられたように栄華をきわめていた時代だと言う。そんなことを聞くと、ますます気になるではないか。
 「あった!」
 文都は見失わないように、緊張する手で色鉛筆をつかみ地図にしるしをつけた。
 『一ツ目はココ。次は東へ二ツ』
 地図にはそう書かれていた。砂流がしたように、磁石と定規でさっと線を引いてゆく。
 『一つ目はココ。次は東へ二ツ。南西へ三ツ。北東へズット』
 「でも、やっぱり最後は海に続いてるよ」
 文都は砂流が地図上に書き足した線を見て、がっくりと気を落とした。何も変わってたようには見えない。
 「あれ、ひょっとして・・・」
 地図に描きこんだ線を見ているうちに、文都はふと思いつくことがあった。それで文都は地図を、もう一度眺めた。線が十字に交差している。この交差点が怪しい。
 確かに線がいびつな形ではあるが十字に交差している。そして線が交わっているところには、ちょうどお菓子の家のような給水塔が建っていた。
 そこは、今は閉鎖されている給水塔だった。蔦と木々にすっかりおおわれていて外からは、まったく見ることができなくなってしまっている。錆びついた柵で閉鎖され、すでに街の人々からも忘れられた場所である。もちろん給水塔の役目など果たしてはいない。クリスマスに作られるようなお菓子の家に似た家が、円柱の塔のてっぺんに取り付けられている不思議な形をしている塔だ。
 「給水塔だ・・・」
 文都は地図を見てぽつりともらす。

 やった、ついに見つけたぞ、と文都は部屋じゅうを飛び回って喜んでいた。ちょうど明日は土曜日で学校も休みだ。明日にでも砂流に言って、一緒に給水塔に行こう。そう考えて支度をしようとリュックに手をのばした時に、そう言えば明日の土曜日は、詩都と灯台に行く約束をしていたと思い出した。ちゃんとリュックの中には、そのための双眼鏡まですでに入っている。色鉛筆もスケッチブックもメモ帳までも。
 じゃあ日曜日? そんなあ。
 文都は日曜日まで我慢できそうになかった。でも詩都と灯台へ行くのをやめるのもできそうにない。今、断ったら今度はいつ行けるかわからないからだ。
 そうだ!
 文都はひらめいた。
 うんと早起きして、みんなが起きだす前に、朝早くに給水塔へ先に行ってしまおう。砂流に言わないのは悪いけれど。ちょっと見ておくだけだから、宝物を見つけても見るだけにしておけばいいよね、と考えた。あとで一緒に行けばいい。
 それから朝食までに帰ってこれば、休日の朝食はいつも遅めだから大丈夫さ。そんな風に文都は納得した。



連載第11回へと続く