銀色ルーペ 12

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銀 色 ル ー ペ 12


 「文都!」
 「砂流?」
 心配そうにのぞきこんでいる砂流の顔を目にした。後ろには詩都と夏伽の顔も見える。ただし夏伽は、二人の後ろの方で腕組みしながら立っている。どんな時でも大人びた態度を崩さない。周囲を見回すと、まだ給水塔だった。地面の上に横たわらされている。
 「どうして、この場所がわかったのさ」
 あの地図が読めるはずがないのに。だってルーペは僕が持っている。文都は自分が助かったことよりも、地図の暗号を解いていないはずの三人がここにいることの方が気になってしょうがなかった。
 「顕微鏡を使って解読したのさ」
 砂流は心配そうに、起き上がる文都の背中に手をまわして支えながら答えた。倍率が高いものであれば見られると言うことに、言われて初めて気づく。
 「砂流が思いついたの?」
 「いや・・・その」
 砂流は言いにくそうに、詩都と顔をあわせた。二人の態度から、文都は誰が地図の暗号を解いたかがわかってくる。
 「夏伽が解いたんだね?」
 文都はそう言って、二人の後ろに立っている夏伽の方を確認するように見た。しかし夏伽は大したことじゃないと言わんばかりの何食わぬ顔で黙って立っている。そんな夏伽の態度を見ているうちに、からみたい気分になってきて、文都は夏伽にくってかかる。
 「だけど! 距離は、どうやって計ったのさ? ルーペは僕が持っているのに」
 「方角さえわかれば、後はその延長線上をすべてたどれば、いずれ見つかる」
 夏伽は簡単なことだと言う口ぶりで、そっけなく答えた。文都など相手にはしていないという感じだ。文都は何日もかかって解いた謎を、あっけなく短時間で解かれてしまったことに、くやしさを感じていた。

 結局あの後、文都は病院に連れていかれ、当然安静にしているように言われ、灯台に行くことも、給水塔に行くこともできずに休日を過ごすことになった。一度、砂流がお見舞いに来てくれたけれど、その時もあまり良いことはなかった。
 ベットに身を起こして、お見舞いに来てくれた砂流と話をしていたのだが、砂流は何故だか言葉数が少ない。どこか態度もよそよそしかった。
 夏伽も謎を解けたことが、ちょっと気に食わないと言う態度を取り続けている文都に、砂流がそっけなく言い放った。
 「そんなこと気にするなよ」
 「だって!」
 文都は反論しようとする。
 「本当はすごい手間だったんだぜ。おまえがいないからって俺の家に電話がかかってきて。それであの地図のことを話したんだ。きっと暗号を解いて、行ってしまったんだと思ってさ。夏伽は大したことないように言っていたけど、本当はレンズの倍率を色々変えたりして大変だったんだからな」
 砂流は怒ったような、憤りを我慢しているような口調で話した。
 「だけど悔しくないの? 夏伽に謎を解かれちゃってさ」
 文都は砂流を見上げて言った。
 「俺だって気に入らないのを我慢しているんだぜ? 文都だって、黙って一人で給水塔に行ったじゃないか」
 その言葉で文都は砂流が何に怒っているかに気づいた。すっかり自分がしたことを忘れていたのだ。砂流と二人で謎解きをしていたのに、一人で先に行ってしまったこと。
 「砂流・・・」
 文都はあやまろうとして、砂流の袖口をそっとつかんだ。だが砂流はその手を、さっと振り払い、そのまま黙って出て行ってしまった。



連載第13回へと続く