夏期学校 04

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夏期学校 〔少年図鑑シリィズ2〕

【第四話 ライブラリィ (上) 】



 日にちが経過するにつれて、文都が休暇前に学校の図書室で借りた本は読み終えてしまった。読み終えた本は、いつまでも持っていてもしかたがない。学校の門の前に備えつけられた返却箱に放り込むと、文都はライブラリィへ向かった。
 砂流が暇なら遊べばいいし、いそがしいなら本を見て回ればいい。どっちにしても、損はしない選択だった。ライブラリィへ向かう路は、路の両側に植えられた木々の並木道のおかげで、すずしい木陰を通って行くことができる。真夏の日差しも暑さも、風の通る木陰では無縁だった。
 ライブラリィの入口が見えて来た。
 文都は入口のすぐ側に、見慣れた長身の姿が自転車によりかかっているのに気づいた。
 これが砂流ならすぐにでも駆けよるところだが、本なんて読む相手ではない。よく図鑑や辞典なら見ている姿を目にもするが。
 あんな似合わない場所に立って何をしているんだろう。
 そう思いながら文都は思わず足をとめる。ライブラリィへ入るには必ず側を通らなければならない。相手だって文都に気づくだろう。
 溶けないタイプの冷チョコレートで作られたシガー・チョコをくわえて時々あくびをかみころしながら、木陰でひなたぼっこをしている。よく見ると耳にイヤホンがはめられている。何かを聞いているみたいだ。
 なんであんなところに立ってるんだ?
 そう思いつつも、だからと言ってあんな奴のために帰るのは嫌だった。
 夏伽は本なんか読むタイプではない。図鑑や辞書はよく詩都と見入っているけれども。
 一人で本を読んでいるのが好きな詩都が、よくあんなやつと友人なんかになったものだと文都は帰りたくないけれど、行きたくもない状態に自分を追いやった夏伽の姿を、遠くから恨めしそうに眺めていた。
 どうして、こんなにも苦手なんだろう。今までの詩都の友人たちとは、かなりタイプが違っている。だからだろうか。ちょっと反感を感じるのは。
 文都はうろうろと、その場でためらっていた。


第5話へと続く