夏期学校 07

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夏期学校 〔少年図鑑シリィズ2〕

【第七話 船上】



 大きな船の上は、まるで一つの島のようだ。水色のインクを溶かし込んだような透明な海面を覗くと、海底の砂まで透けて見える。青や紫や黄色の色のきれいな魚たちが群れをなして泳いでいる姿が見える時もある。珊瑚が森のように海底に生い茂っているのが見える時まである。海底って、こんな風になっているんだ、と文都は感嘆していた。こんなにもきれいで澄んだ海を見たのは初めての体験だった。
 今日の文都の服装は、蝶々襟の半袖シャツの制服姿だ。紺色の半ズボンをズボンつりで吊っている。みな同じような恰好をしていたが、そんな生徒たちの群れの中でも、文都はすぐに砂流を見つけ出し駆け寄ることができた。
 ちゃんと麦藁帽子をかぶってきたんだね。砂流は文都の姿を見て言った。藍色のリボンがついている。子供っぽいかな、と文都はちょっと心配したが、砂流は別にからかうでもなく、その方がいい、日射病で倒れると困るからな、と軽く続けた。
 上級生も下級生も、これから始まる臨海学校に対するさまざまな期待でわくわくしている。泊まる場所はどんなところだろう。何をするのだろう。魚は釣れるかな。泳げるのかな。どんな食事がでるんだろう。島の上だと言うけれど、おやつはあるんだろうか。そんな熱気が軽い混乱となって船の上には満ちていた。
 楽しい時が永遠に続くかのように、少年たちの時は過ぎてゆく。


第8話へと続く