夏期学校 09

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夏期学校 〔少年図鑑シリィズ2〕

【第九話 碧石】



 「ねえ、砂流。この貝の名前教えてよ」
 文都が砂流と海岸を歩きながら話をしていると、クラスメェトの碧石(あおいし)がそう声をかけてきた。ふりかえると、碧石のきれいな碧色の両眼が目に入ってきて、文都はそのきれいな碧色に一瞬驚く。この臨海合宿に来て砂流と同じ部屋になってから、碧石は砂流によく話しかけるようになっていた。
 「ああ、いいよ」と砂流は気軽に答えている。
 臨海合宿に来て以来、砂流は人気者だ。何と言っても、いろいろなことを知っている。
 貝や植物、星の名前に関する知識は、文都の学年では、おそらく一番だ。それも飛び抜けて。理科の教師よりも知っていることがたくさんある。
 「めずらしい貝だね」
 碧石の手のなかには、大きな貝殻が握られていた。
 砂流がのぞきこむのに、つられるように覗き込んだ文都に、碧石は
 「知ってるのかい?」とめんどうそうに聞いてきた。
 「いや、知らない」と文都が答えると、砂流は「これは、めずらしい貝なんだゼ」と説明を始め、文都はいつものように砂流の説明に耳を傾け始めた。
 「月の満ち欠けにあわせるように、この貝も月と同じ形に満ち欠けするんだ。不思議だろう? 日の光の下では乳白色をしているけれど、夜になって月光を浴びると、月の光を反射して月と同じ色に光るんだよ。このことからムゥーン貝と呼ばれていて・・・」
 砂流の説明は続けられる。


第10話へと続く