夏期学校 11

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夏期学校 〔少年図鑑シリィズ2〕

【第十一話 お邪魔虫】



 夕食を食堂で砂流と向かい合った席に座って取っていると、
 「ねえ、砂流。今日、これ見つけたんだ。何だかわかるかい?」
 そう言って話しかけてくる者があとを立たなかった。砂流が説明を始めると、あっと言う間にテーブルのまわりには人だかりができてしまう。とても落ちついて二人で話してはいられなくなってしまう。こんな時、文都は人だかりにうんざりして、さっさと自分の部屋に逃げだすのが、いつものことだった。
 今日も食べかけのキャロット・ブレッドを握ったまま、人だかりから抜け出した。まだフルゥツ盛りを食べ残していることが心残りだったが、砂流の話を聞こうと文都の肩や背中に寄り掛かってくる人間がいては、どちらにせよ落ちついて食べることはできないと、あきらめることにした。
 それにしても・・
 文都はまだ同室者が帰っていない一人きりの部屋で、持ってきたキャロット・ブレッドをかじりながら、たくさんの友人に囲まれていた砂流の様子を思い出してみる。花火を見せてくれると言う約束は、ずっと延期されたままになっている。今夜ももうだめだろう。
 そう思うと喉の渇きが気になりはじめ、レモン水を持ってこなかったことを後悔した。キャロット・ブレッドの残りを無理やり口に押し込み、さっさとベッドに入ってしまう。
 おじゃま虫は一人じゃないぞ、と文都は感じ取った。


第12話へと続く