夏期学校 12

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夏期学校 〔少年図鑑シリィズ2〕

【第十ニ話 裏山】



 頻繁に砂流に声をかけてくる碧石が、文都と張り合っている気がするのは、気のせいではないぞと文都は思いはじめた。砂流と話をしている時、ふと碧石と目が会うと、文都の視線を挑戦的な目で捕らえてくるのだ。砂流が視線をあげると、そのとたんに挑戦的な光は消えてしまうのだが。そんな視線は文都に居心地の悪さを感じさせる。
 なぜ碧石と視線が会うと、こんなにも嫌な気分になるのか。文都はわからなかった。ただ顔を会わせるのが苦手だった。
 砂流と過ごす時間が少なくなるにつれ、段々とつまらなくなってきて、相手をしてくれない砂流に腹が立ってきた。やつあたりだってことは知っている。だからよけいに顔を合わせづらくなってゆく。文都が砂流と話していて楽しいように、他のみんなだって砂流と話していると楽しいから砂流と話したがるのだ。そんなことあたりまえじゃないか、と文都は自分を納得させようと思う。けれどもうまくいかず、一人になりたくなってホテルの裏山に向かった。
 ホテルの前の海辺には生徒たちがたくさんいるが、ホテルの裏側に広がる木々の生い茂る山に近づく生徒は、ほとんどいなかった。蛇が出るとの噂があったからだ。けれど文都にはとっては人がいないところの方がよかった。


第13話へと続く