夏期学校 13

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夏期学校 〔少年図鑑シリィズ2〕

【第十三話 岩場】



 最近、一人でいることが多い。文都は岩場を歩きながら、ふとそのことに気づいた。
 ホテルの裏山の森の中は、やはり気味が悪かったので進路変更をして、なるべく森の端を歩いているうちに、ごつごつとした岩場に出てしまっていた。岸壁の下に海が見える。高台に来てしまったようだ。
 ところどころに岩の割れ目があり、考え事をしながら歩くには危険な場所だ。けれど、岩の割れ目に落ちないように気をつけて歩くのは、目の前の危険にだけ注意を向けることができるため、他の事を考えなくてすむので、文都にはちょうど具合が良かった。それで最近では気が滅入ると、ついついこの岩場に来て歩くことに集中してしまうことが多くなってしまっていた。

 「文都。これからみんなで花火をやりに行くんだ。一緒に行かないか?」
 話しかけてくるクラスメェトに適当に相槌を返しながら夕食を終えた後、自分の部屋に向かう途中で、廊下を数人で歩いて来た砂流が文都に話しかけた。みな同じクラスの生徒たちだった。にぎやかな集団だ。
 「風邪ぎみなんだ。今日は遠慮しとくよ」
 砂流の後ろに立っている碧石の睨むような視線に反射的に目をそらした文都は、それだけ言うと砂流の返事も待たずにさっさと通り過ごした。大丈夫か、と砂流が言いかけたのを感じたが聞こえないふりをした。
 なぜだか碧石と一緒には花火をやりたくはなかった。あの視線は苦手だ。気が滅入ってしまう。

 一人で星空を見上げていると、ふと詩都と夏伽も船の上で、この星空を一緒に見ているような気がしてくる。きっとまた一緒にいるに違いない。
 すっかり文都の足が自然と向くようになってしまった岩場に座って、夜空を見上げながら文都は、そんなことを色々と考えていた。
 それにくらべて自分は・・
 そう思うとやりきれなくなる。こう言うのをみじめと言うのだろうか。
 砂流は、あの「特別製の」花火をみんなと一緒にしてしまったのだろうか。文都に見せてくれると言ったのに。
 文都の脳裏に、ふいに碧石の姿が浮かび、文都は思わず固く目を閉じた。


第14話へと続く