夏期学校 14

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夏期学校 〔少年図鑑シリィズ2〕

【第十四話 洞窟】



 一人で憂鬱を持て余しながら岩場を歩いていた文都は、その「穴」の存在にその日初めて気づいた。最初は岩の割れ目だと思って、避けようとした。けれど案外、大きい割れ目だったので、どのくらい深いのだろうと興味を引かれて中をのぞきこんだのだった。
 のぞきこむと、まるで井戸のような深い底の見えない縦穴だった。誰が作ったのか石の階段が目立たないように取り付けられている。海の中へと誘い込むように、ぐるぐると螺旋状に底へと続いている。岩穴に取り付けられた石段を、下へ下へと下りてゆく。遙か下に見えていた海面が、ところどころ開いた岩の隙間から見るたびに、思った以上に近づいていることに、ひどく驚かされる。まるで海の中へともぐって行っているような感覚だ。
 いや、感覚だけではなく、実際に近づいているのだ。波の音は岩穴の中で途絶えることがない。
 誰が作ったのだろう。見上げると青い空が点となってしまっている。そんなにも深く下りてしまったのか。でも、まだ下がある。気づくと波の音が聞こえなくなっていた。海中にもぐってしまったのだろうかと文都は思い至る。すでに足元の階段を見つけるのも、やっとと言うほど穴の中は暗くなってしまっている。光が届きにくくなっているのだ。
 注意深く下を見た。ますます暗くなっている。どうしようか。戻ろうか。文都は足をとめてためらった。砂流と一緒なら・・
 けれど砂流はいつまでも忙しい。
 ぽつりとそう思った。
 一人で行こう。
 文都は決心をすると靴の底で足場を探りながら洞窟の底へと下りていった。


第15話へと続く