夏期学校 17

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夏期学校 〔少年図鑑シリィズ2〕

【第十七話 洞窟4】



 文都は二人きりの海底で、ウミの言葉に耳を傾けているのがすっかり好きになってしまっていた。猫のように丸くなってウミの膝の上に頭を置き、目をつぶってウミの声に耳を傾けているととても気持ちがいい。ウミも猫を撫でるように文都の頭を撫でながら話をしてくれた。
 「詩都とは、どんなことを話したの?」
 ふと気になって聞いてみた。
 「いろいろさ」
 きれいなスミレ色の両目を持つ青年は、あいかわらずローレライのような魅惑的な声でしゃべる。
 「ふうん」
 夏伽も一緒だったのかな、と文都は気になった。
 「詩都は一人だった?」
 「ああ、いつも一人で来ていたよ。しつこく自分を追いかけまわす相手がいて、まいっていると言っていたっけ」
 それはきっと夏伽だと文都は察した。二年前と言うとちょうど自分たちがこの街へ引っ越してきた頃のことだ。
 「それは愉快だね」
 文都は口元が緩むのを感じた。
 「詩都が追いまわされていたことが?」
 意外そうなウミの言葉を文都はあわてて否定する。
 「違うよ。追いかけまわしていた奴が詩都のことを見つけられなくてさ」
 「そうだね。詩都が姿を消してしまう行き先を見つけられなくて、ひどく悔しがっていたみたいだよ」
 「へえ、ここを見つけられなかったんだ」
 文都は心地よげにうっすらと目を開け、愉快げに笑った。
 「詩都は、今も追いかけまわされているの?」
 「今は・・・友達さ」
 文都は少しばかり不機嫌そうに膝を抱えて目を閉じた。


第18話へと続く