夏期学校 22

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夏期学校 〔少年図鑑シリィズ2〕

【第二十二話 ロォレライ】



 「会いたい人に会いに行く気になった?」
 ずっとこのまま青白い静かな海底で、ローレライの声を聞きながら眠っていたいと感じていた文都は、その言葉にふいに身を起こした。
 きれいなスミレ色の瞳が文都を見ている。
 「会いたい人には、会いに行かなければ会えないよ」
 静かに青年は言葉を続ける。
 文都は黙って青年の言葉を聞いた。
 ああ、そうか、と気づいた。
 そういえば砂流は、文都が街に転校してきたころ、しょっちゅう声をかけてくれたのだった。一緒にいられるように。
 そうさ。声もかけずに一緒にいられるものか。側に行かないのに、一緒にいられるものか。近づかないのに仲良くなんかなれるものか。
 一緒にいられるように、砂流が「画策」してくれていたのだと気づいた。そうでなければ一緒になんかいられるものか。そんな簡単なことに初めて気づいた。
 会いに行かないのに、会えるものか。いつだってお互いにそうしてきたのだった。すっかり忘れていた。会いにいかなければ会えるわけないのに。
 会いに行こう。
 文都は無性に砂流に会いに行きたくなった。いてもたってもいられずに、椅子から勢いよく立ち上がる。
 「行くの?」
 短く青年は聞いた。
 「うん」


第23話へと続く