歌少年 02

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歌少年 ~音楽の守人~ 

〔少年図鑑シリィズ3〕


~~~~第2話 片眼鏡の売り子~~~~



 二メートル近くもある大きな濃い緑色の葉ばかりの植物の群生を、かき分けるようにして進んでゆく砂流の後ろ姿を見失わないように気をつかいながら進んでゆく。まるで熱帯の緑の楽園だ。すべすべとして、ひんやりと冷たい感触の大きな葉の表面を撫でながら進んでゆく。
 それにしても、こんな風に植物で隠されているんじゃ、〔小箱〕を買いに行く人が少ないのも無理はないなあ、と思いながら文都は、大きな緑の葉っぱをカーテンを開けるようにかき分けてゆく。
 でも、こんな植物の奥にあるお店なんて、砂流は一体どうやって見つけたんだろう、といつもながら不思議に思う文都だった。
 ふいに植物が途切れ、空間が広がる。植物群に囲まれた出入り口のない小さな広場と言った感じである。
 思わず文都は足を止めてしまう。
 小広場の中央に小さな屋根のついた移動用の木製の屋台があった。まわりの植物たちの緑に溶け込むような緑色の屋根に、明るい黄緑色の柱と壁。そのすぐ隣に置かれた黄色の丸椅子に座っている男の存在に、文都は気づいた。人の気配に気づいたのか、下を向いていた青年はふいに頭を上げて、文都たちの方を見た。
 思わずとまどう文都に、にっこりと笑いかけてくる。人懐っこい笑いだ。特徴的な片眼鏡を右目にかけている。フレームは琥珀色だ。硝子の中の目の色も琥珀色だった。長い茶色い髪は後ろで一本に束ねられている。気さくな感じだ。
 植物考古学を専攻している。失われた植物を調べる学問だ。そんなことを砂流は文都に耳打ちしながら、文都の背中に手をあてて行こうと誘った。前に来た時に聞いていたのだった。砂流の誘いに導かれるままに、文都は砂流と青年の方に歩き始めた。
 「へえ、青い靴だね」



第3話へと続く