歌少年 04

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歌少年 ~音楽の守人~ 

〔少年図鑑シリィズ3〕


~~~~第4話 ライブラリィと木の実のクッキィ~~~~



 翌日から砂流はライブラリィの文献庫にとじこもりっきりになった。学校にも出てこない。何をしているのか、すぐに文都にはぴんと来た。気になることがある時、砂流は何日だって夢中になってそのことに取りかかるのだ。その間、文都は放っておかれる。
 大きなテーブルにいくつもの本が積み上げられている。その間で砂流は埋もれるようにして本を読んでいた。ノォトを届けがてら学校帰りにライブラリィへ立ち寄った文都だったが、邪魔しないように、黙って隣の椅子に座って砂流の横顔を眺めていることぐらいしかすることがない。
 失われた歌、なんていかにも砂流の気を引く存在だ。これは当分は遊べないな、とあきらめ、文都は椅子の上で膝をまげて抱え込んだ。

 結局、日が影るまでそうして砂流の横顔を見ていた後、文都は家へ帰っていった。
 気持ちが沈んでいたせいか、疲れを感じながら家に帰ってみると、家に入るなり、いい香りがただよってきた。食堂に入ると詩都と夏伽がテーブルの上にお菓子を広げて、暖かいハーブティを飲みながら談笑していた。
 詩都が足を痛めていて外出ができないせいか最近、夏伽は頻繁に文都の家に出入りしていた。そのせいで文都は夏伽と頻繁に顔を合わせていた。
 「どうしたの? そのお菓子」
 いい香りにつられて、文都はテーブルの上に置かれたお菓子に目を向けた。
 「授業で作ったんだ。食べる?」
 そう言って詩都は、すり硝子の瓶に入ったクッキィを文都の方へ近づけた。
 かりかりの木の実が、ふんだんにまぶされていて香ばしい薫りが文都の食欲を刺激してくる。木の実クッキィだ。アーモンドの香りがする。
 「ミルク味のビスケットの方が、お子様向きじゃないか?」
 からかうような口調で夏伽が茶化す。
 「そんなことないよ」
 と文都は強めに言い返して木の実クッキィを口に放り込む。かみ砕いた途端に、あまい蜂蜜の味が舌を刺激した。カリカリとした木の実の歯ごたえがおいしい。なんだ、大人向けだなんて言っても平気じゃないか、十分においしい、と文都は思う。
 「ずいぶん無防備に食べるんだな。知らないのか? アーモンドは死の香り・・・て言う言葉を」
 気持ち良く堪能していた文都の気を削ぐように、夏伽が口を挟んだ。
 「なんだよ、それ?」
 文都はぶっきらぼうに聞き返す。
 「青酸カリは、ほのかにアーモンドの香りがするそうだぜ。そのクッキィも毒入りかもしれないぞ?」
 夏伽は、にやにやと意地の悪い笑いを浮かべながら文都の顔を見ている。反射的に詩都の方を視線を向ける。すると詩都も堪えるように、おかしそうに笑っている。それで二人して自分をからかっているのだと文都はわかった。
 人が悪い。ぐるになって、ろくでもないことばかりしているんだ。この二人は。どこまでが本当で、どこからが嘘なのか、わかったものじゃない。
 文都はアーモンドの香りのする木の実クッキィを数枚、手でつかむと、さっさと食堂を後にした。

         第5話へと続く