歌少年 05

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歌少年 ~音楽の守人~ 

〔少年図鑑シリィズ3〕


~~~~第5話 バナナ入りハチミツドーナツ~~~~



 どちらかと言うと、気になったことは頭から離れないタイプだ。調べ物に夢中になっている砂流のことは言えないと思う。文都は自分でもそう自覚している。だからアーモンドの香りは死の香り、と言う夏伽の言葉が、妙にいつまでも自分の頭の中に残っることにも気づいていた。
 何日かぶりに学校に出てきた砂流の存在がうれしくて、砂流の側にくっついてあれこれと話してしまう文都であった。なかなか「青い靴」の歌に関する資料が見つからないせいか、息抜きの気分転換を図ろうとしているのか、砂流もちゃんと文都の相手をしてくれていた。ひさしぶりに学校帰りにお気に入りのドーナツ屋に二人で行く。
 アーモンドをたっぷりとまぶしたドーナツ。お気に入りのやつだ。もちろん砂流は何のためらいもなく、それを注文してぱくつく。
 「なんだよ、食べないのかよ? いつも食べるくせに」
 砂流は不思議そうに詩都の顔をのぞき込んだ。
 文都はちょっとためらった後、バナナ入りハチミツドーナツを注文した。受け取るとほのかにシナモンの香りが漂う。
 「別に」
 そう答えながら、文都は白いカップに入ったホットミルクに、黒砂糖の小さなかたまりを落とした。
 「怖がりなんだな」
 ドーナツを頬張ったまま、つぶやくように砂流が言った。
 「なんだよ、それ?」
 どきりとしながらも、文都は何とか知らんぷりを装って、バナナ入りハチミツドーナツの端をかじる。
 「アーモンドは毒薬の香り、だろ?」
 「なんで知ってるんだよ?」
 最近聞いたばかりの言葉に文都はドーナツから口を離して聞き返した。
 「夏伽たちに言われた」
 砂流は粉砂糖がついた指を軽く舌先でなめ、興味なさそうに答える。
 文都は、またあの二人におもちゃにされたことに気づいた。やっぱり詩都は夏伽なんかとつきあってちゃ駄目だ。もっと真面目で誠実な友達を作らせなくちゃと文都は、決意を新たにせずにはいられなかった。

         第6話へと続く