歌少年 07

文字の大きさは、こちらで変えられます→ 小 | 中 | 大 |

ityouline.gif
歌少年 ~音楽の守人~ 

〔少年図鑑シリィズ3〕


~~~~第7話 オルゴォル・カフェ~~~~



 文都は砂流を誘って、オルゴール・カフェ「赤い靴」に足を入れた。
 オーナーが世界中から集めためずらしいからくりオルゴールが無数にある。大きな箱型のものが多めだ。グランドピアノ型の巨大なオルゴールもある。三十分おきに店内のオルゴールの螺子が次々とまわされ順番に演奏が披露されてゆく。
 室内の照明はそれぞれのテーブルの上に置かれた蝋燭の炎だけに抑えられており、演奏されるオルゴールには、うやうやしくスポットライトがあてられる。オルゴールの優美な姿が闇の中にあざやかに浮かび上がり、オルゴールショーは行われる。足首までとどくような長い黒いエプロンを身につけた背の高いウエイターが、慎重な手つきでオルゴールの螺子を回してゆく。
 日によって、時間によって、まわされるオルゴールの種類や音楽が異なる。世界でただ一つしかないものが、ほとんどだった。確かにここならば、失われた音楽を発掘するのには都合が良さそうだ。
 それにしても、こんな場所に二人はよく出入りしているのだろうか。そういぶかしまずにはいられない文都だった。ずいぶんと洒落た雰囲気のお店だけれど。それに少々高めだった。
 でも雰囲気はいい。それにオルゴールもいい。気に入ってしまった。砂流の顔を見てみると、砂流もかなり気に入ったことがわかった。興味深げにまわりを、あれこれと見回している。
 すでに三回目の演奏が始まっていた。
 文都は静かに演奏される音楽に耳を傾けた。
 聞き慣れた曲もあったが、聞いたことのない曲も多い。世界中で、たった一つだけしかないオルゴールの中にしまわれている失われた曲たち。すでに楽譜もなく、人々の記憶からも忘れ去られていたけれど、ただ目の前にあるただ唯一のオルゴールだけが、その曲を守ってきたのだった。
 音楽の守人たち。
 失われた音楽たちが音楽の守人たちによって再生されるのを、文都は敬虔な気持ちで懸命に聞いた。心にとどめておこうと思って。
 そんな気持ちで、じっと目を閉じてオルゴールの演奏を聞いていた文都は、腕をつつかれて目を開けた。すると砂流が顔を近づけて見てみろよ、とささやきながら演奏されているオルゴールの方を指さした。
 見ると、上品で落ちついた青色をした、大人の胸辺りまで高さのある大きな箱型のオルゴールが演奏されている最中だった。両開きの扉が開いて、中ではからくり人形たちの劇が演じられている。見ていると背景になっている森の色が次々に変わり、入って行った人形たちが白い袋を持って次々と出て来ているるが見えた。
 「あれが、どうかしたの?」
 「青い靴の少年だよ」
 「え?」

         第8話へと続く