歌少年 13

文字の大きさは、こちらで変えられます→ 小 | 中 | 大 |

ityouline.gif
歌少年 ~音楽の守人~ 

〔少年図鑑シリィズ3〕


~~~~第13話 祭典の歌~~~~



 「商売? 誰の?」
 いきなり話が思いもよらない方向へ行ってしまったので、文都はとまどってしまう。
 「そう。この歌はね、文都。少年の父親にお金をもらって頼まれた殺し屋(密猟者)が、夏(緑の森)に少年を森で殺し、秋(黄色の森)になって父(木こり)が息子を探すふりをして死体の様子を見にいき、息子は見つからなかったと言う情報を持って帰る。
 秋も深まった(赤い森)頃、山賊が衣類を死体から盗み、人買いが冬(灰色の森)の初めに死体を売るために森から死体を盗んだと言うことを表現しているんだよ。昔は死体も売り物になったんだ。髪の毛や骨なんかが。こうして少年はあとかたもなく消えてしまうんだ。
 問題は靴屋が何もない森へ入って行ったと言うところだったんだけれど。靴屋は何を持って帰ったのかがわからなかったんだ。けれど、この歌の役割を考えていたら、さっきやっとわかったんよ」
 文都は黙って砂流の言葉の続きを待った。
 「ポイントは『何もない森へ』と言うところなんだ。『何もない』って言うのは、飢餓のことだと思うんだ」
 「そっか。昔はよく飢餓が起こったって言うものね。でも飢餓がどう関係あるの?」
 わからずに文都は問う。
 「昔は、飢餓の中で自分が生きのびるには子供を殺すしかなかったんだ。だけど、そんな状況でも自分では殺せなかったに違いないよ。自分の子供だからね。だから殺し屋に頼んだんだろうな」
 「なるほど。そんな悲しい過去の記録が歌になってたのかあ」
 文都は納得した。けれど悲しくなってきて、軽く目を伏せテーブルに視線を落とす。
 「違うよ、文都。そうじゃない。この歌は悲しみを歌ったものなんかじゃないんだ」
 砂流の言葉に文都が目をあげると、砂流は静かな表情で文都の視線を受け止めた。
 「どういうこと?」
 「何もない森へ靴屋は入って行っているはずなのに、靴屋は飢餓の中で、何かを得ていることになっている。何を? それがこの歌の目的なんだ」
 そう言って砂流は言葉を切った。
 「飢餓になったら親のかわりに子供たちを殺すのが靴屋の目的じゃないの?」
 文都は砂流の言葉を待つ。
 「いいや。文都、もう殺し屋は登場しているだろ? 靴屋は殺し屋じゃないんだよ」
 「じゃあ、何?」
 「靴屋はね、募集の象徴なんだよ」
 「何を募集するの?」
 「・・・飢餓になったら、靴屋の募集が始まるのさ。つまり靴屋の役割って言うのは、ふたたび飢えに襲われた村人たちに、子供を殺すための殺し屋を紹介して生きのびる道をそそのかすんだ。殺し屋との契約の仲介を行う。それが靴屋だ。靴屋が得たものは、親たちとの契約のことなのさ」
 砂流の言葉が途切れると、二人の間に沈黙が流れた。やがて文都がぽつりともらした。
 「どうして靴屋なんだろう」
 「親たちと契約がすむと、標的とする子供には青い靴をはかせるように親たちに渡していたんだろうな。殺す子供の目印として」
 砂流の言葉を文都は黙って聞いていた。
 「たぶん、あの青いオルゴールは、そのための宣伝用なんだと思う。だから広場で演奏できるような移動式だったんだ」
 砂流はそう語り終えた。


         第14話へと続く