絵の中の記録 01

文字の大きさは、こちらで変えられます→ 小 | 中 | 大 |


   u003icn.gif

絵の中の記録 (ユリ・シリーズ)

-  1  -



 その絵を見た時、どこかで見た景色だと感じたのだ。
 特に有名な観光地を描いているわけではない。どこか・・・異国の農家の中庭・・・そんな感じだ。
 納屋のような白い二階建ての建物が中央にあって、ニ階に小さな窓がたったひとつと、一階に木のドアがひとつ。奥は森のようだ。手前には両側に建物の一部が見えていて、影になっている。そして藁に薪と古びた荷車が置かれている。
 そんな田舎の農家の風景を描いた絵だ。
 その絵は、大学の近くのカフェの壁に架けられていた。
 そのカフェには、普段から絵が何枚も壁に飾られていた。有名な画家ものではなく、異国の路上画家たちの絵を集めて、販売しているようだ。どうやら、ささやかな芸術の後見人のつもりらしい。
 でも、カフェの壁に架けられている絵と言うのは、案外見ないものだ。だって他人が座っているテーブルの前に立って絵を眺めるわけにはいかないだろう?
 そんなわけで、オレも何度も利用している店にもかかわらず今まで、絵を一枚一枚眺めたことはなかった。だけど今回は、ちょうど腰掛けようとした椅子の上、しかもちょうど目の高さに飾られていたから、何気なくそちらに視線を向けただけだ。たぶん、そんなふうにいつも絵が目には入っていたのだと思う。けれど、そのまま素通りしてしまっていたのだろう。
 けれどその絵が目に入ってきた時、あれ?と頭の隅に何かひっかかるものを感じて視線をとめてしまった。


     その2へ続く