廃都 1

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~廃都 1 ~




ひとは自分を守るために要塞である都市を造ったはずなのに。
そのなかにいてもなお、傷つけられることから、のがれることはできない。





 この国は、今、内乱状態なんだ。
 内乱と言うのは、一つの国のなかで戦うことなんだそうだ。戦争中は、たくさんの人が毎日死ぬ。だから天涯孤独になる子供がたくさんいるんだそうだ。でも、おれの家は大家族だ。
 そのなかでも、特におれのお気に入りは、八歳の妹。ペトラーチョ。いたずら好きで、やんちゃだ。人を驚かすのが大好きなのだ。おれも何度驚かされたことか。手品でもおぼえたら大変だ。
 それから、まだずいぶんと若い、生まれつき足の悪い叔父。センブレア。物静かで、やさしくて、おれのお気に入りだ。いつも本を読んでいることが多い。何か相談をすると、かみさまにお祈りしなさい、と言うのがくちぐせだ。説教は嫌いだけど、そう言って細く白い手を、おれの頭に乗せてくれる。その手の感触が心地よくてお気に入りだ。そのときに、ちょこっとほほえんでくれる表情もいい。
 この若い叔父は、杖を手放せないのだ。いつでも杖を持っている姿が、魔道士か、異宗教の大僧正みたいで、きっとすごい力を持っているんだと、おれは信じている。
 姉はこの静かな叔父を、役立たずだと言って、軽んじている。でも、作戦を考えたりする軍人になっていれば、すごく役に立っていただろうとおれは思っている。色々なことを知っているから。でも、おかげでおれのそばにいつもいてくれるのだから、軍隊になんか行かなくてよかったのだ。
 だって、軍隊に行った父さんは、死んだという知らせが来たきりなのだから。
 顔半分が赤くやけただれている背の高い叔父。ルージャ。この叔父のほうは、いつも陰鬱だ。
 その奥さんであるふとっちょで働き者のおばさん。ディーカ。このおばさんについて、よく買い出しの荷物運びを手伝ったものだ。おれたちはみんな、きゅうきゅう生活しているのに、おばさんは、こっそりとちいさな甘いお菓子を買ってくれたりもする。
 子供には必要なものだと言って、柔らかそうな大きな手から、魔法のように取り出すのだ。ペトラーチョは実はディーカおばさんの子供なんだけれど、でもおれたち一族はずっと一緒に暮らしているから、家族なんだ。だからペトラーチョはおれの妹だった。



廃都2へ続く