廃都 3

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~廃都 3 ~




ひとは自分を守るために要塞である都市を造ったはずなのに。
そのなかにいてもなお、傷つけられることから、のがれることはできない。





  紹介が遅れたけれど、姉のコレーリィはおこりんぼだ。すぐに怒るから僕は、ちょっと苦手だ。きれいだと言われるとよろこんでいる。
 そして母さんも叔母さんたちも、とにかくこの頼りになる大男のグランダを気に入っていた。もちろんおれだって気に入っている。ひとつのことをのぞけば。
 そのひとつのことと言うのは、グランダ叔父さんは、センブレアとも仲良しだということ。よくふたりで話をして、笑っていたりする。そんなとき邪魔をしたいのに、どうしてだかいつも入っていけないのだ。
 天気のいい日には、グランダおじさんは、センブレアを抱え上げて人の少ない木のある場所で日光浴をさせている。そんなときは、俺もついていく。センブレアの大切な杖を持つのが、おれの役目だった。この杖さえあれば、センブレアはひとりでも十分に歩けるのだけれど、なぜかグランダおじさんはセンブレアを歩かせなかった。
 ディーカ叔母さんに聞いたら、センブレアのような若い男が、昼間からぶらぶらのんきに散歩をしていたらまずいから、と言うことだった。
 そうかな。でもグランダおじさんだって、灰色のひげで顔をおおっていなければけっこう若いはずなんだ。どうして、戦場にいないんだろう。一度、グランダおじさんにそのことを聞いたら、軍隊をくびになったんだよ、と冗談めかして言っていた。軍隊もくびになるのかな。よくわからないけど、俺たち家族には必要な存在だからいいんだ。
 最後に母さん。いつも顔色が悪い。青いと言うよりも、疲れたような土気色だ。
 でも、陽気だったかと思うと、もくもくと黙って仕事をこなしていたり、不機嫌だったり、母さんに話しかけるときは、よく注意してからでないといけない。無理に話し相手にしようとすると、凶悪だ。でも陽気なときは、歌や踊りを教えてくれたりして、妹と俺で手足をばたつかせて、狭い家が大騒ぎになる。どうも俺にも、妹にもダンスの才能はないようだ。
 その点、ディーカおばさんは踊りが上手だ。母さんとディーカおばさんは、くるくるとどこにもぶつからずに器用に踊る。
 センブレアの日向ぼっこのお供をしたり、母さんやおばさんたちと歌をうたったり、ダンスをしたり、おやつを目当てに、妹と母さんたちの手伝いをしたり、そんな日はもう、過去のことなのだ。
 戦争は軍人同士がするものだと言うけど、結局普通の町の住人であるおれたちにも被害は及ぶのだ。軍隊の通り道になるという情報が飛び交って以来、町は大騒ぎだ。
 どうして外国ににげないかって? だって戦争をしている国からの難民は嫌われているからさ。
 おれが小さいころ、一度となりの国に逃げていったことがある。だけど、追い返されるようにしてまたこの国に戻ってきたんだ。おれは小さかったからよくわからなかったされど。おれの質問におばさんは、とにかくこの国にいるしかないんだよ、と言ったんだ。



廃都4へ続く