廃都 4

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~廃都 4 ~




ひとは自分を守るために要塞である都市を造ったはずなのに。
そのなかにいてもなお、傷つけられることから、のがれることはできない。





  もう何日も家でじっとしている。こそこそと動き回っている。覆いで、窓の外を見ることもできない。軍隊が来るという噂は本当なんだろうか。来てほしくないけど、本当なら本当で、とにかく早く来てほしい。来ないなら、来ないと言ってくれ。わからないのが、一番不安だ。でも、いつもこんな調子で何もわからない。
 軍隊は、いったい何のために誰と戦っているんだろう。国民のためなのかなあ。でも、おれは迷惑してるぞ。いつもおびえていなければいけないし。おれは強いんだー、と言っても、不安感は持続している。一日中、壊れかかったつりばしの上で暮らしているようなもんだ。つりばしは揺れるし、落ちたら自分が死ぬべき場所もいつも見えるんだぞ。
 ああ、いやだよ。こんなときは、センブレアのひざに頭をのっけて、撫でてほしいな。でも、そんな「とびっきり」のことをしてもらっていても、やっぱりそこはつりばしの上なんだ。気がまぎれない。
 映画で見た牢獄はいいなあ。堅固でしっかりとしている。牢屋をつりばしにしたら、みんな入りたがらないと思うんだけどなあ。
 買い物の帰り、強盗にあった。泥棒じゃない。男だった。いきなり顔をなぐられて、もう意識がなかったのに、そのあとも、えんえんとやつはおれをなぐっていたようだ。だって次に意識を取り戻したとき、おれは大怪我をして瀕死の重症だったから。何日間も意識もないまま、うなされていたらしい。
 母さんもおばさんたちも泣いていた。おれは泣かなかった。でも思い出した。こういうことがあって、昔、兄さんが殺されたこと。
 兄さんは戦争で死んだんじゃないんだ。おれはなぜだか自分がなさけなかった。そしてくやしかった。おれをなぐったのは、確かに大人だったのに。おれは子供なのに。最初の一発で意識だってなかったのにさ。でもなぐり続けるんだ。
 そんなふうにすねていることが、センブレアにはわかってしまったらしい。
 センブレアはいつものように、おれのあたまをちょっとなでて、お前が生きてくれていてよかった、と言った。おれは返事をしなかったけれど、センブレアの目を見たら、うん、と言いたくなった。



廃都5へ続く