廃都 5

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~廃都 5 ~




ひとは自分を守るために要塞である都市を造ったはずなのに。
そのなかにいてもなお、傷つけられることから、のがれることはできない。





 となりで何かあったようだ。となりには、姉さんの友達のアミキーノの一家が住んでいる。アミキーノは姉さんとうまが合うらしくて、おしゃべりだ。
 おれはまだ歩きまわることはできずにベットに縛りつけられていたから、くわしいことはわからなかったし、誰も説明してくれなかったけれど、なんとなく慌ただしくて、母さんもおばさんたちもおちつかないようすだ。
 特に、コレーリィ姉さんと妹のペトラーチョを絶対に外に出さないようになった。強盗は家のなかにでも入ってくるんだから、外にでなくても同じだと思うんだけどなあ。事実しょっちゅう強盗に押し入られてるんだ。
 うちだって、もう何度も襲われてる。そのときに、おじさんとおばさんが死んだ。逆らったからなあ。でも逆らわなくてもあいつらは殺すけど。




 ここのところ爆音がしていない。
 変な感じだ。なんだか何も聞こえないんだけど、耳をおかしくするような音がしている感じだ。ペトラーチョもお耳が変、変と言っていた。音は敵を見分ける貴重なしるしだ。その音が聞こえないと不安だ。
 昨日の夜、大人たちが集まって話をしていた。どこかへ逃げよう、と。でもどこへ。うわさを聞いた。強盗も、人殺しも追ってこないところだと。戦闘機もこないし。税金を踏み倒しても、だれも強制徴収にやって来ないと。ただ・・・
 ただ?
 病院はあるけれど、薬も医者もないようなものだと。
 いいじゃないか。いまだって、もう十分にないのだから。これ以上無い世界なんてあるのかい。
 いずれ必ず死ぬ場所だ、と。
 それはどこでもそうさ。この世で死なない場所なんて無い。かみさまに使えている坊さんたちだって死ぬのだから。
 では、行こうか。子供たちにはなんて?
 真実を?
 真実は残酷ではない。教えよう。戦いの理由も原因も知らないままでは、この戦いを収拾することはできないのだから。隠してはいけない。未来は、子供たちが大人になったときのために、教えておこう。決めるのは、そのときの大人だ。



廃都6へ続く