廃都 6

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~廃都 6 ~




ひとは自分を守るために要塞である都市を造ったはずなのに。
そのなかにいてもなお、傷つけられることから、のがれることはできない。





 どこへ行くの?
 ペトラーチョの手を引くのが旅行中の俺の役目だった。
 センブレアはゆっくりと歩けるのだけれど、長時間は無理だった。だからグランダおじさんが何度も背負っていた。俺もセンブレアの役に立ちたかったけれど、何の役にもたてそうになかった。はやくセンブレアを持ち上げられるほど、たくましくなりたい。
 でも今は、おとなしく、ペトラーチョの手を引いていたんだ。そのとき、ペトラーチョが、おれに聞いてきたのだ。
 どこへって?
 おれはこれからおれたちが行く場所を知っていた。でも、おさない妹にわかるだろうか。
 廃都だよ。
 おれはそう答えた。
 はいとって?
 妹はまるいめをして、おれを見上げている。
 ひとが生活しなくなった都市のことさ。
 どうして住まないの?
 ここは都市ではなくなりました、って国の偉い人が言ったからさ。
 ふうん。どうしてわたしたちは住めるの?
 もうだれもいないからさ。
 どうして誰もいないの?
 国の偉い人が強制退去させたからだよ。
 じゃあ、わたしたちも退去させられちゃうね。
 大丈夫だよ。もうだれもいないから、軍人も役人もこないんだよ。
 兵隊さんも来ないの?
 ペトラーチョは驚いたように、おれを見ている。
 うん、そうだよ。もう誰も戦争に行かなくていいんだよ。ずっと、一緒にいられるんだよ。そこでは毎日遊べるよ。
 おれは勇気づけるように、少し声を大きくして言った。そこまで言ったとき、すぐ後ろに、センブレアを背負っているグランダおじさんの存在に気づいた。ふたりは黙っておれのほうを見ていた。おれがふたりに気づくと、ちょっとわらって見せる。
 おれもちょこっと笑い返した。
 そうだ、センブレアとゆっくり歩いて公園まで行こう。もうだれも指さす奴も、ののしるやつもいないのだから。
 おれは楽しみな計画を立てながら歩きつづけた。



廃都7へ続く