廃都 11

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~廃都 11 ~




ひとは自分を守るために要塞である都市を造ったはずなのに。
そのなかにいてもなお、傷つけられることから、のがれることはできない。





 コレーリィ姉さんが熱を出した。母さんは風邪だと言う。でも、みんなの胸を一抹の風が過った。不安な風。でも誰も口にしない。容体は良くなったり悪くなったりした。
 この日から姉さんは寝たきりになったしまった。


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 廃都・・・ひとの住み着かない都市。ひとはそこを死都と呼ぶ。人をかならず死へと導くから。だが、他の都市であっても人はさまざまな死の原因におおいつくされている。はたして人は、どちらですごすのがふさわしいのか。
 死都へゆこう。ここも死都なのだから。そこは人をひきよせない都。ひとの住まない廃都。ひとが住まないからこその楽園なのだ。
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 死都と言われていてもまぶしい光がふりそそぐ。まるでひとを祝福するかのように。死都にも神はいるのだ。神がいるのならば、ここも楽園じゃないか。と、おれは思った。今は散歩中だ。晴れ渡った澄んだ青い空をあおぎ見る。人を殺しにくる死に神が来る心配はない。神様がまもっていてくださるからだ。ここはエデンの園だから、殺人者は入ってこられないのさ。
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 ふらりと教会へ足を踏み入れる。入口のドアは壊れ、道端にくだけた木の破片とともに打ち捨てられている。中はほこりで床も椅子もざらざらとしている。祭壇も物は床にちらばりすさんだ印象を受ける。
 だが、神はこの街全体に存在しているのだから、ここは楽園なのだから。楽園のなかに教会なんて必要ないんだ。
 祭壇の前に立ち、天井を仰ぎ見る。そこには円い大きなステンドグラスの窓・・・ところどころ割れているが。神の与えたもうた澄んだ青き空とは異なる透明感のある宇宙の神秘のあおい色が輝きを放っていた。
 なんて美しいのだろう。人がそれを価値がないと決めつけたって何にもならない。神様の価値観と人間の価値観は違うだろうから。人がどんなにゴミ屑で役に立たないと決めつけたって、神様はちゃんとうつくしさを与えていらっしゃるのだ。だって事実、美しいのだから。



廃都12へ続く