廃都 12

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~廃都 12 ~




ひとは自分を守るために要塞である都市を造ったはずなのに。
そのなかにいてもなお、傷つけられることから、のがれることはできない。





 人通りの絶えた大通り。かつて逃げ回っていた街にも大通りはあった。ある時は人におおわれつくされた道。あるときは人の絶えた道。どちらであってもいつ狙撃されるんじゃないかと、真ん中なんて歩いたことはない。
 通りの真ん中を歩く。ぶらぶらと。ポケットに手を入れて。
 戦車に撥ね飛ばされることもない。スリやかっぱらいの心配もない。たかりや絡みもない。撃ち殺されることも、突然の爆発もない。そう、突然の爆発は何もかもを奪う。
 おれは道を歩く。
 空は神のあたえたもうた美しい空。
 地上は自分の信頼する者たちだけ。
 殺戮者も侵害者もいないよ。
 兵役もない。税金もない。病気になったら死ぬだけ。いいじゃないか、それで。ここは楽園だ。死へと導かれる楽園。だが、人は死ぬべき運命なのだ。どんな大都市の要塞に住もうと死神をふせぐことなんてできないのだ。
 怯えつづけ、なお生命だけを保てと? おなじ人間に苦しめられ続けて。
 生きるための都市と言っても、いつひかれるか分からない道路を通っている。いつ襲われるかわからない場所でくらしている。隣人や同僚、学友は醜聞好きの連中ばかりだ。そうして人を傷つける。人種、国籍、宗教、政治、なんだって理由になる。ずるがしこいやつら。いつもいつも誰かの血を流している。
 だが、ここでの生活は・・・なんて美しいものに囲まれて、そして大切な家族と静かに暮らすことができるのだろう。まるで・・・まるで奇跡のように。
 おれたち家族は、この町へ来て過ごした。
 人々が廃都と呼ぶ呪われ、汚染された町で。
 おれたちはむさぼるように、生きていることを体験したのだ。



廃都13へ続く